前回の記事では1本の移動平均線から株価トレンドを予測・分析する方法について解説しました。
ですが、2本以上の移動平均線を使って株価分析を行う場合が一般的です。
2本以上の移動平均線の推移や株価との位置関係を分析に使うことで、より詳細に株価分析を行うことが可能となるからです。
分析方法には様々ありますが、今回は2本の移動平均線を使った代表的な分析手法である、
「ゴールデンクロス」
「デッドクロス」
の2つについて、解説していきます。
この分析手法はすぐにでも活用することが可能ですので、今回の記事をご一読いただいたら、是非株価選別の際に活用してみてください!
また、移動平均線の分析について、「移動平均線の新しい読み方」(かんき出版)の内容を参考にしております。
移動平均線の新しい読み方 6つのポジションで相場を見通す [ 野坂晃一 ]
気になった方は、こちらの書籍も読んでいただき理解を深めてみてください。
ゴールデンクロスとデッドクロスとは?
2本以上の移動平均線から株価トレンドを分析する、「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」とはどのような分析手法なのでしょうか?
この分析手法についてお話する前に、まず前提として、2本以上の移動平均線について押さえておきましょう。
ここで、移動平均線が2本以上といっていますが、この移動平均線は同じ期間というわけではなく、「短期」と「中・長期」の移動平均線を使います。
例えば、日足チャートであれば、5日・25日・75日の期間の移動平均線を使って分析を行うことが多いです。
では、この「短期」と「中・長期」の移動平均線でどのように株価トレンドを分析するのでしょうか。
その分析とは、
「短期」と「中・長期」移動平均線の交差(クロス)の仕方から、株価トレンドを分析します。
つまり、この移動平均線の交差した点が売買シグナルとなるわけです。
そして、交差の仕方によって「ゴールデンクロス」、「デッドクロス」という呼び方がされております。
それでは、この「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」の内容はどのようなものなのでしょうか?
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が中・長期移動平均線を下から上へ突き抜けたときの交差点を指します。
このゴールデンクロスが発生した場合、株価は上昇トレンドとなる場合が多く、一般的には「買い」シグナルといわれています。
ゴールデンクロスを図式化した場合、下記のような関係性となります。
デッドクロス
デッドクロスとは、短期移動平均線が中・長期移動平均線を上から下へ突き抜けたときの交差点を指します。
このデッドクロスが発生した場合、株価は下落トレンドとなる場合が多く、一般的には「売り」シグナルといわれています。
デッドクロスを図式化した場合、下図のような関係性となります。
ゴールデンクロス、デッドクロスともに共通するのが、
「短期移動平均線が中・長期移動平均線を突き抜ける」
という関係性にあることです。
そして、この突き抜ける際に、
下から上に突き抜けているのか。
上から下に突き抜けているのか。
によって、株価トレンドも変化するとともに、売買シグナルともなります。
チャートで見るゴールデンクロスとデッドクロス
上述では、図式でゴールデンクロスとデッドクロスについてお話しましたが、実際のチャートではどのようになっているのでしょうか?
それぞれについて、チャートから実際に見ていきましょう。
ゴールデンクロスの例
下図は、2020年10月~2021年2月の日経平均株価 日足チャートです。
チャートの緑枠(2020年11月3日~4日付近)を見てみましょう。
この付近にて、株価はすこしずつ上昇を始めています。
また、5日移動平均線(赤線)が25日移動平均線(緑線)を下から上に突き抜けています。
いわゆる、ゴールデンクロスが形成され、「買い」シグナルが出現しています。
このゴールデンクロス出現以降、株価は23,000円台から2021年2月の29,000円台まで上昇トレンドの局面に移行し、株価上昇を続けました。
ここで、中・長期移動平均線(25日移動平均線)に注目してみましょう。
25日移動平均線(緑線)の傾きは横ばいか緩やかな右肩上がりの傾きとなっています。
このように、
中・長期移動平均線が「横ばい」・「緩やかな右肩上がり」となっている。
短期移動平均線が下から上に中・長期移動平均線を突き抜けた。
こうした場合にゴールデンクロス形成となります。
デッドクロスの例
下図は、2019年3月~2019年7月の日経平均株価 日足チャートです。
チャート上の緑枠(2019年5月7日付近)に注目してみましょう。
この付近にて、株価は下落を始め、
5日移動平均線(赤線)が25日移動平均線を上から下に突き抜けています。
そのため、この緑枠の付近でデッドクロスを形成し、「売り」シグナルとなります。
実際にデッドクロス形成後、株価は22,000円台~20,000円台まで下落し続けました。
ここで、中・長期移動平均線(25日移動平均線)の傾きに注目してみましょう。
下落直前までは、右肩上がりの上昇トレンドにありましたが、徐々に傾きが横ばいに近づき、デッドクロス形成時には、横ばいから緩やかに右肩下がりの傾きとなっています。
このように、
中・長期移動平均線が「横ばい」・「緩やかな右肩下がり」となっている。
短期移動平均線が上から下に中・長期移動平均線を突き抜けている。
こうした場合に、デッドクロス形成となります。
ゴールデンクロス・デッドクロスから株価予測をする場合のポイント
ゴールデンクロス、デッドクロス形成時に共通している、短期移動平均線が中・長期移動平均線を突き抜ける点がありましたが、さらに、
「中・長期移動平均線が横ばい、または上昇・下降トレンド入りする傾きとなりつつある。」
状況の時に、短期移動平均線が突き抜けることによってゴールデンクロス・デッドクロスを形成します。
ここで「横ばい」・「トレンド入りする傾き」と2パターンの中・長期移動平均線の形状がありますが、ゴールデンクロス・デッドクロスを売買シグナルといて判断する場合は、個人的に、
中・長期移動平均線が、「トレンド入りする傾き」にて、短期移動平均線が突き抜ける場合に売買シグナルとして判断し、株価選別を行ってみるとよいでしょう。
なぜなら、横ばいの際に短期移動平均線が突き抜けたとしても、株価はそこまで上昇・下落しない場合もあるからです。
逆にトレンド入りする傾向にある中・長期移動平均線を短期移動平均線が突き抜ける際、その後の株価は上昇・下落トレンドとして局面入りすることが多いように感じます。
移動平均線が交差し、ゴールデンクロス・デッドクロスを形成した(売買シグナルが出現した)だけでなく、その交差した際の移動平均線の傾きも考慮してその後の株価予測をすることで、さらに踏み込んだ分析を行うことができます。
ゴールデンクロス・デッドクロスのデメリット
ゴールデンクロス・デッドクロスは株価予測をするためには、比較的簡単に分析を行うことができる手法でもあります。
一方で、この分析にはデメリットもあります。
それは、
ゴールデンクロス・デッドクロスが出現した際には、株価はトレンド入りしている場合が多い
という点です。
これは、以前の記事で紹介した、移動平均線には遅行性があることが原因で起こってしまう現象です。
それゆえに、ゴールデンクロスが出現しても、その後株価があまり上昇しない、もしくはすぐに下落してしまうというようなことも起こりえます。
これも、すでに株価は上昇していることが要因にあります。
そのため、ゴールデンクロス・デッドクロスにて株価分析・予測を行う場合は、
①:ゴールデンクロス・デッドクロスの出現を早めにピックアップして、株価選別を行う。
②:ゴールデンクロス・デッドクロスの出現を株価から想定して、先回りして選別を行う。
この2点を心掛ける必要があります。
とはいっても、②の方法は初めての方や経験が浅い方にはなかなか難しくもあります。
そのため、慣れるまでは①の方法で株価選別を行いながらゴールデンクロス・デッドクロスの出現を先読みするクセ付けを行っていくとよいでしょう。
まとめ
今回は2本以上の移動平均線を使った株価分析として、「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」について紹介しました。
ここで、移動平均線2本以上での分析とありますが、個人的に移動平均線は2本で分析する方がいいでしょう。
例えば3本になった場合、増えた分だけ移動平均線の交差点が増えることになります。そうすると、クロスのパターンも多くなり、判断材料も増えてしまうため株価選別の意思決定に迷いを生じさせやすくなり、適切なタイミングを逃してしまう恐れもあります。
そのため、2本の短期、中・長期の移動平均線を使って分析を行ってみるとよいでしょう。
そして、今回は複数の移動平均線を使って株価分析を行う方法ではありましたが、株価と移動平均線の関係も重要な分析における要因となります。
次回は株価と移動平均線との関係から株価分析を行う方法について解説していきたいと思います。
次回もご一読いただけると嬉しいです!
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