仕事を行っている際、よく「PDCAサイクル」での業務改善が推奨されていることが多いかと思います。
PDCAサイクルはフレームワークとしても有名であり、書籍なども多く販売されています。
主に業務改善や効率化に向けて使われますが、一方で、
「サイクルを回すのに時間がかかる」
「柔軟な推進を行いづらい」
といったデメリットもあります。
IT技術の進歩やAIなどの普及により、社会的にも変化が激しい時代でもあります。
そのため、業務改善や効率化にもスピード感が求められる状況にもあります。
そこでPDCAサイクルとは異なり、スピード感を持ったマネジメントサイクルである、
PDRサイクル
が注目されています。
今回は、業務改善や効率化のスピードを高めるPDRサイクルについて解説していきます。
≪結論≫
・PDRサイクルはPrep(準備)、Do(実行)、Review(見直し)の3つのステップから成る。
・スピード感をもって、柔軟にサイクルを回すことができる。
・仕事だけでなく、自己成長にも活用できる。
・一日単位でPDRサイクルを回すと成長が加速する。
PDRサイクルとはいったい何なのか?
PDRサイクルは2011年にハーバードビジネススクールのLinda HillとKent Linebackによって考案されたマネジメントサイクルです。
このマネジメントサイクルには、
・PDCAサイクル
・OODAループ
などがあります。
特に、PDCAサイクルは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
PDCAでは、
Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Act(改善)
の4つのサイクルを回して、改善・効率化を図るサイクルです。
では、PDRはどのようなサイクルなのでしょうか?
PDRは、
Prep(準備)
Do(実行)
Review(見直し)
の3つのサイクルを回して、改善・効率化を図ります。
ここでPDCAサイクルとPDRサイクルを比較すると、
サイクルのステップが1つ少ない。
というのが、大きな違いです。
PDRサイクルの特徴
PDRサイクルはマネジメントサイクルとしてPDCAサイクルよりも優れていると一部では言われています。
では、PDRサイクルの特徴にはどんなことが挙げられるのでしょうか?
その特徴として、下記2点が挙げられます。
他のマネジメントサイクルと比較して、スピード感をもって取り組むことができる。
PDRサイクルは前述のとおり、PDCAサイクルと比べると1ステップ少ないサイクルです。
そのため、PDCAサイクルでは4ステップを回すのに時間がかかっていた分、PDRサイクルの場合は効率よくサイクルを回すことができます。
ここで、
サイクルを回す時間が効率化されるメリットは何なのか?
という疑問も出てくるかと思います。
サイクルを効率的に回すことができると、
・より早く仮設-検証を繰り返すことができる。(そのため、改善を早められる。)
・試行錯誤を繰り返し、フレームワークとして使いやすくできる。
といったメリットが生み出されます。
改善しながら物事を進めていくことができる。
PDCAサイクルの場合、
Plan-Do-Check-Act
のステップのうち、Plan(計画)のステップで計画を作り込み、
Do(実行)に移る場合があります。
確かに計画を念入りに立てて、実行に移ることも必要です。
ですが、今日のように社会情勢や経済状況など多くの点で変化が激しい状況下では、計画通りに物事が進むことは難しい場合が多いです。
そのため、計画の軌道修正を適宜行う必要性があり、改善を繰り返しながら物事を進めていくことが求められます。
PDRサイクルの場合、3つのステップをスピード感をもって進めていくことで軌道修正を行いやすく、まさに改善をしながら進めていくためのサイクルでもあります。
このような進め方を行うことで、計画に狂いが生じた際にも、工数の出戻りを最小限に抑えることもできます。
PDRサイクルは具体的にどのように回していくのか?
ここまで、PDRサイクルとは何なのか?そしてその特徴について解説してきましたが、
実際に、PDRサイクルの、
Prep(準備)
Do(実行)
Review(見直し)
3つのサイクルではどのようなことを行って、サイクルを回していくのでしょうか?
それぞれのステップの具体的な内容は下記の通りとなります。
Prep(準備):実行に向けた準備を行う
Prepのサイクルでは、Do(実行)に向けた準備を行うステップです。
ここでの準備というのは、物事を実行するにあたっての、
・目的
・目標
・手段
・いつまでに行うか(期限)
などを明らかにして、次のDo(実行)のステップに移ります。
このPrepのステップにおけるポイントは、
5W1Hで整理すること。
です。
なぜなら、このステップで念入りに時間をかけて準備を行ってしまうと、サイクル全体にかかる時間が増えてしまい、PDRサイクルの良さが失われてしまいます。
そのため目的や目標など、事前に準備することを5W1Hで簡潔に整理することで、次のDo(実行)のステップに素早く移ることができ、よりサイクルをはやく回すことが可能となります。
5W1Hで思考を整理する方法は、下記書籍を参考にしてみるとわかりやすいです。
Do(実行):Prepで準備したことを実行に移す
Doは、Prepで準備したことを実行に移すステップです。
このステップでは、目標や納期、目的の達成に向けて物事を進めていきます。
そして、このDoのステップで重要なポイントは、
物事を実行している最中に見直し(Review)を行わないこと
です。
なぜなら、PDRサイクルでの「Review(見直し)」は実行した結果に対して見直しを行います。
そのため、まだ結果が出ていない実行中の段階での見直しは適切なものでない可能性もあり、軌道修正の方向性がズレてしまうことにもつながりかねません。
Review(見直し):実行した結果を見直す
Review のステップでは、Do(実行)のステップで行った結果を見直します。
ここでポイントとなるのが、単純に実行結果の良し悪しを見直すのではなく、
Prep(準備)で定めたことへの達成度合いを見直し、成功/失敗要因を明らかにする
ことです。
なぜなら、結果の良し悪しを見直しても今後の改善や成長につながるわけではないからです。
Reviewのステップで重要なことは、
・Prepで準備したことは適切であったか?
・成功/失敗要因は何か?
であり、これらを明らかにして、次のPDRサイクルのPrepにつなげていく必要があります。
改善や自身の成長を効率的に行うためにも、このReviewのステップで見直して気づいた「学び」を次のPDRサイクルに活かしていくことが肝心です。
とはいっても、見直すことに時間を割いてしまっては、PDRサイクルを高速回転させて効率化することの障害にもなります。
そのため、見直しに時間がかかってしまう場合は、
「YWT」
のフレームワークを取り入れると、見直しを行いやすくなります。
このYWTとは、
Y:やったこと
W:わかったこと
T:次にやること
の3つの項目で結果に対する振り返りを行い、次につなげていくフレームワークです。
特にこのYWTは実行したことに対する経験を学びにすることに重点を置いたフレームワークでもあるため、PDRサイクルのReviewのステップとも親和性が高く、簡潔に見直しを行うことができます。
YWTのフレームワークについて、もう少し踏み込んで学ぶ場合は、下記書籍を参考にしてみてください。
Reviewのステップがうまくいかない場合は、是非YWTを使って見直しをしてみましょう。
実際の活用法は?
ここまで、PDRサイクルの概要や各ステップの進め方についての解説でしたが、実際にPDRサイクルを回すとなるとどのように行うのでしょうか?
私の場合、このPDRサイクルは一日単位で回しています。
期間を長くとってサイクルを回してしまうと、PDCAサイクルを回しているのと変わりがなくなってしまうからです。
また短期間かつ自己成長にもつなげていくとなると、一日単位でPDRサイクルを回すことで、例えば仕事の進め方を軌道修正することや学びをすぐに次に生かすことができます。
実際に、仕事の場合を例にとり、私のPDRサイクルの回し方を例に挙げてみたいと思います。
Prep:その日やることに対して、目的と目標、いつ、どのようにやるかを整理
毎朝、仕事を始める前のルーチンでもありますが、その日に行うタスクに対して、
目的(Why)
目標(What)
いつ(When)
どのように(How)
の4つで整理を行います。
MTGなどがある場合は、参加者(Who)についても整理しておきます。
例えば、「プレゼン資料を作成する」というタスクに対して、
目的:明後日のプレゼンに向けて、明日レビューと修正を行うため。
目標:今日プレゼン資料のたたき台を作り上げる。
いつ:午前中の時間(3時間)を使って。
どのように:骨子とストーリーをまとめて、パワーポイントで資料化する。
といったような流れで整理します。
とはいっても、「ここまで行っている時間はないよ…」
と思われる方もいらっしゃるはずです。
その場合、上記全てを整理するのではなく、
「今日は定時であがる!」
「今日中に資料を作りきる!」
といったように、目標を立ててみましょう。
ここで避けるべきことは、準備をせずにいきなり実行に移ることです。
Do:prepでの準備したことに対して、一日のタスクを進捗
Do(実行)のステップでは、実際にタスクを進捗していきます。
ここでポイントとなるのが、タスクが終わっていない段階で見直しを行わないこと。
逆に午前中にタスクが終わったものに関しては、休憩終了後に簡単に見直しを行っています。
なぜなら早い段階でタスクが終わった場合、そこで気付いたことを他のタスクを進捗している間に忘れてしまうのを防ぐためです。
特に今後の役に立ちそうな学びや気づきはタスク完了後にメモを取っておくなども有効です。
Review:一日の業務進捗がPrep通りだったかを見直す
Reviewのステップでは、仕事を進捗する前のPrepで定めた内容通りにタスクを進捗することができたかを見直しています。
この見直しでは、
・タスクを進捗していて気付いたことや学んだこと
・タスクが完了/未完了となった原因は何か
をポイントとして振り返り、テキストや文字として書き起こし、翌日以降につなげるようにしています。
とはいえ、終業の際には残業になってしまうことや帰り時間が遅くなってしまうことも起こりえます。
そのため、私は上記のポイントをYWTのフレームワークを使って、形式的に振り返りを行い、テキストとして記録を残すようにしています。
こうすることで書き方に迷うことなく、ルーチン化させることもできるため、私個人としてはReviewの方法としておすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
PDRサイクルは変化の激しい現代社会において、仕事や自己成長のどちらにも使うことができるマネジメントサイクルでもあります。
またPDCAサイクルのように時間をかけず、短期間でサイクルを回すことができるため、実際に個人としても取り入れやすいものでもあります。
PDRサイクルそれぞれのステップを行う際にも、5W1HやYWTといったほかのフレームワークとも組み合わせることで、より使用者の行いやすいサイクルに適正化することも可能です。
明日からでも実践できるPDRサイクルを取り入れ、仕事の効率化やさらなる自己成長を加速させていきましょう。
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