株価分析において、一般的によく使われる分析に「移動平均線」を使ったトレンド(傾向)分析が挙げられます。
以前の記事では、移動平均線を使った分析について概要のような形で紹介しましたが、移動平均線を使った株価トレンドを分析する場合、
・どのように分析を行うのか?
・分析からどんなことが分かるのか?
このような点が重要になってきます。
この移動平均線を使った分析については、別の記事でも記載しておりますが、今回は移動平均線の傾きから株価トレンドを分析する方法について解説していきます。
なお、移動平均線の分析について、「移動平均線の新しい読み方」(かんき出版)の内容を参考にしております。
気になった方は是非、こちらの書籍も読んでいただき理解を深めてみてください。
移動平均線の新しい読み方 6つのポジションで相場を見通す [ 野坂晃一 ]
移動平均線を使ってどのように株価の傾向を読むのか?
移動平均線はこの移動平均の値を折れ線グラフにしたものですが、この移動平均線を使うことによって、株価が
・上昇トレンドにあるのか?
・下降トレンドにあるのか?
を読むことができます。
では、そのトレンドを読むためにポイントとなってくるのは何でしょうか?
それは、移動平均線の傾きを見ることです。
2020年10月~2021年2月の日経平均株価、日足チャートを見てみましょう。
下図のチャートでは、2020年11月から日経平均株価は上昇トレンドにあります。
では、ここで25日移動平均線(緑線)を見てみると、移動平均線は右肩上がりに伸びていることが読み取れます。
ここで、移動平均線の傾きとして、
右肩上がりの場合=株価上昇トレンド
という関係となります。
一方で下降トレンドの場合はどうでしょうか。
今度は2008年5月~2010年1月の日経平均株価、週足チャートを見てみましょう。
下図のチャートにて、2008年9月22日付近から株価が大きく下落し、2009年3月頃まで下落トレンドにありました。ちょうどリーマンショックと呼ばれる株価下落がこの近辺にあたります。
では、この時の26週移動平均線(緑色)の傾きはどうなっているでしょうか?
株価が下落トレンド真っ只中の場合、移動平均線のは右肩下がりに伸びています。
そのため、下落トレンド時の移動平均線の傾きとして、
右肩下がりの場合=右肩下がり
という関係となります。
こうした上昇・下落トレンドでの移動平均線の傾きのポイントをまとめると、
株価上昇トレンド:移動平均線は右肩上がり
株価下落トレンド:移動平均線は右肩下がり
となり、右肩上がりなのか?右肩下がりなのかをチャートから読み解くことで、その株価の現状のトレンドを読み解くことが可能となります。
ここで、「単純に右肩上がり・下がりだけを見ればいいのか?」という疑問も出てきます。
実際にはこの見方だけでは、株価はすでにトレンド入りしてしまっているため、売買タイミングとしては乗り遅れてしまう場合もあります。
では、株価上昇トレンド・下落トレンドをさらに読み解くため、上昇トレンド、下落トレンド別から移動平均線の傾きについてさらに深掘りしていきます。
株価上昇トレンドでの移動平均線の傾き
前述では株価上昇トレンドの場合、移動平均線は右肩上がりに伸びているとお話しましたが、このタイミングで売買を行おうとしても上昇トレンドに乗り遅れてしまう場合もあります。
そこで、次にポイントとなるのが、この移動平均線の右肩上がりとなる
起点と終点の傾き
はどのようになっているかという点です。
実際に日経平均株価のチャートから見てみましょう。
下図は2016年6月~2018年11月までの日経平均株価、週足チャートです。
ここで、26週移動平均線に着目し、移動平均線の傾きに対して3つのポイントを見ていきます。
ポイント1 株価上昇入り局面(上昇トレンドの起点)
株価が上昇トレンド入りした場合、上図の26週移動平均線(緑色)の傾きを見てみると、最初は水平に近く緩やかに推移していたものの、急に移動平均線が右肩上がりになり始めています。
このように緩やかだった移動平均線の角度が急に大きくなり始めて、右肩上がりになりそうになっている場合、株価は上昇トレンド入りする可能性があります。
ポイント2 株価上昇局面(上昇トレンド中)
株価が上昇トレンド入りし、値が上がっている場合は、移動平均線の傾きは右肩上がりになる傾向にあります。
また、この移動平均線の傾き角度が大きい場合、株価は急上昇している状況にあります。
ポイント3 株価停滞入り局面(上昇トレンドの終点)
株価の上昇トレンドが終わりに近づいた場合、移動平均線の傾きはどうなるでしょうか?
上図のチャート、26週移動平均線(緑色)の傾きを見てみると、右肩上がりに伸びていた傾きが緩やかに水平に近づいていることが読み取れます。
このように右肩上がりに伸びていた傾きが徐々に緩やかになって、水平に近づく場合は株価の上昇トレンドは頭打ちとなり、一定の価格帯でのレンジ相場に入る可能性があります。
ここで、ポイント1~3の移動平均線の形状を図式化すると、下記のようになります。
基本的に株価が上昇トレンド入りし、トレンドが終わるまでの間の移動平均線の傾きは上記ポイント1~3の形をとることが多いです。
ですが、株価のボラティリティ(変動率)が大きい場合には、ポイント1、3は緩やかというよりも急こう配に上昇・下降の傾きとなる場合もあります。
株価下落トレンドでの移動平均線の傾き
ここまでは株価上昇トレンドにおける移動平均線の傾きについてお話しましたが、逆に株価下落トレンドになった場合の移動平均線の傾きはどのようになるのでしょうか?
株価下落トレンドについても、「起点と終点の傾き」をポイントにお話しします。
実際に日経平均株価チャートを参考にしてみます。
下図のチャートは、2015年5月末~2017年1月までの日経平均株価 週足チャートです。
ここでも、26週移動平均線(緑色)に着目し、移動平均線の傾きに対して3つのポイントを見ていきます。
ポイント1 株価下落入り局面(下落トレンドの起点)
株価が下落トレンド入りする場合、上図のチャートから26週移動平均線(緑色)の起点を見てみます。
そうすると、最初は緩やかに水平から下落方向(右肩下がり)に傾いていた移動平均線の角度が大きくなり、右肩下がりの移動平均線に近づいています。
このように、最初は水平から緩やかに右肩下がりに推移していた移動平均線の傾きが突如その傾きの角度が大きくなって右肩下がりの移動平均線となった場合、株価下落トレンド入りする場合があります。
ポイント2 株価下落局面(下落トレンド中)
株価が下落トレンド入りし、株価の値が下落している場合は移動平均線の傾きは右肩下がりとなる傾向にあります。
また、この右肩下がりの傾きの角度が大きくなった場合、株価が急落し、大幅下落となる場合があります。
ポイント3 株価下落減速局面(下落トレンドの終点)
株価の下落トレンドが終わりに近づいた場合、移動平均線の傾きの角度は緩やかになります。
下落トレンドが一服すると、移動平均線も右肩下がりに下がっていたのが、水平に近い形となります。
移動平均線が水平の形となることで、株価自体は一定の価格帯で動くレンジ相場に移行する場合があります。レンジ相場から株価に影響を与えるイベントなどが起こることで、再び下落または上昇トレンド入りの傾きをとることとなります。
株価下落トレンドにおけるポイント1~3の移動平均線の傾きを図式化すると、下図のようになります。
下落トレンドにおいても、基本的に下落トレンド入りから下落トレンドが終わるまでの間、それぞれの局面で移動平均線の傾きはポイント1~3の形状をとることが多いです。
ですが、やはりボラティリティが大きい場合はポイント1、3の移動平均線の角度は大きくなり、急角度な移動平均線となる場合が多いです。
トレンドの変曲点
上述で株価の上昇・下落トレンドでの移動平均線の傾きに関してお話しましたが、この両トレンド入りする場合には、ある共通点があります。
それは、移動平均線が、
「水平から右肩上がり・右肩下がりの傾きに推移する」
ということです。
この水平となっている変曲点を見極めて、トレンドをつかむ上で重要となります。
もう少しわかりやすく、図も交えて解説すると
上昇トレンドから下落トレンドに移行する場合
下図のように、株価上値圏で水平に推移していた移動平均線が赤枠の変曲点以降、右肩下がりの下落トレンドに移行します。
下落トレンドから上昇トレンドに移行する場合
下図のように、株価底値圏で水平に推移していた移動平均線が変曲点以降、右肩上がりの上昇トレンドに移行します。
この移動平均線が水平、つまり傾きがゼロの点を変曲点と呼びますが、実際に株価チャートで判断することは可能なのでしょうか?
これは、私の経験上かなり難しいという印象です。
株価を予測し、この変曲点となるタイミングを予想して株価注文を出すことはできますが、なかなか予想通りいかないのもまた事実です。
ですが、この変曲点をピンポイントで狙うというよりも、変曲点以後の移動平均線の傾きからトレンドを予測して株価注文を出すほうが難易度としては低くなります。
株価は生き物のように予想に反した値動きをすることも多々あります。
変曲点をピンポイントで狙って投資するよりも変曲点をピンポイントで狙うよりも、変曲点以後の移動平均線の動きからその後のトレンドを予測して投資を行ってみましょう。
まとめ
今回は移動平均線の傾きから株価のトレンドを予測する分析法について解説してきました。
ここで、全体を通してポイントとなるのが、
・1本の移動平均線の動きだけでも、株価のトレンド予想は可能。
・トレンド予測する場合は、できる限り期間の長い移動平均線でトレンドを予測する。(日足なら25日、週足なら26週など)
となります。
ただし、今回は1本の移動平均線で株価トレンドを予想しましたが、2本の移動平均線を使った株価分析の方が主流となってきます。
次回は2本の移動平均線を使った株価分析について解説していきたいと思います。
次回の記事についてもご一読いただけると嬉しいです。
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